旧松任町には、若宮八幡宮と金剣宮(かまつるぎ)の箇所の大きなお宮さんがあった。
勿論現在もある。そこでは春と秋にお祭りがあり、屋台や出店が出て賑わった。春は金剣、秋は若宮のお祭りが盛んだった。思い出すことを書いてみたい。
4年生の時、金剣の鳥居の前で、手の骨が見える顕微鏡が売っていた。
手を空に翳しその顕微鏡で覗くと手の骨が見えるというものである。口上につられてどうしても欲しくなり迷った挙句買った。
その時「おい、ちょっと来い」と呼ばれた。見ると学校の担任の西井先生の顔があった。先生に物影に呼ばれて「何を買った」と聞かれた。「これ」と言って買ったものを見せた。「なんでこれを買ったのだ」と問い詰められて、「どうして手の骨が見えるのか知りたかった」と答えた。「そんなもので骨が見えるはずがない」「見たとき見えた」「無駄使いだ、よく考えろ」と叱られた。家に帰って分解すると黒い小箱の対物レンズにあたるところに鶏の羽の一部が入っていた。騙される者がバカだという教訓が身に染みた体験だった。
5年生~6年生の時は、若宮さんで旗持ちのアルバイトをした。(その頃はアルバイトとは言わなかったようだが)
御神輿の前を旗の行列が練り歩くのである。長い旗竿の先から赤い布や白い布のはたが下がっているものを担いで歩くのである。
11時頃になると先生に若宮のお祭りの旗もちに行きますと言って教室を飛び出し仲間と若宮へ駆けて行った
。旗は龍などの絵を描いた旗と赤、白の布だけのはたの2種類あり、絵旗の方が少し重く駄賃も少し高かった。御神輿が休憩所に着くと休むことができホットして水を飲んだものである。
あの頃は若宮さんの境内にサーカスや見世物小屋がよくかかっていた、天然の美の音楽やジンタの音が響き、見たい誘惑を覚えた記憶がある。小遣いのない身では中に入ったことはなかったが、懐かしい思い出である。止む無く金のかからない能舞台の方を見に行ったものである。最近ジンタの音も聞かなくなったようだ。