正雪記を読んで
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   【正雪記(上下) 】 山本周五郎著 新潮社山本周五郎長編小説全集 第8,9巻

  由比正雪は江戸幕府3代将軍家光時代末期に起きた慶安事件という謀反事件の首謀者と言われているが、殆ど伝説的な人物で記録も残っていないとのことである。資料がない中で、800ページにも亘る単行本を書き上げた構想力、文章力には感服するばかりである。

 内容は、少年時代に見た、食い詰めた浪人が日雇いの仕事ももらえず生活苦に追い詰められた姿が心に
染み付き、幕府が基盤安定のため大名家を改易することなどで増える浪人を助けるべく活躍する姿を描いたものである。

 現在の静岡県の由比の染物屋に生まれた少年が、旅の細工師に連れだって家出し、江戸へ出て数年食い扶持稼ぎをしていたが、発心して旅に出見聞を広め人望を得た。島原の乱の中で松平伊豆の守信綱を知り浪人隊の結成を進言し採用される。しかし、浪人隊を造り浪人をまとめて討ち取る幕府の浪人抹殺の方針を知った。その窮地を脱し逃げる途中、ふとしたことから木曾の御嶽山中の洞窟に埋蔵されていた巨万の富を得た。江戸へ戻りその富を使い道場を開き、門人を集め次第に名声を高めた。江戸の各大名家へ出張講義に行く様になり、紀伊徳川家に行き徳川頼宣と面談する機会を得て、北海道開拓し浪人に生きる目的と働き口を与えようと進言したが、伊豆の守に拒絶された。浪人を中心とした門人達が決起しそれを口実に幕府に謀反の罪で罰せられると言う物語である。