飛族(ひぞく)を読んで
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読売新聞の書評を読んで、おもしろそうだと思い日立南部図書館に日立市記念図書館から取り寄せてもらい読んだ。

沖縄の国境に近い離島に住む元海女の92歳と88歳の老婆と、その生活を心配し大分から迎えに来た娘(64歳)の交流を描いた物語である。

二人が住んでいるのは日本の西の果て、遣唐使が唐に発つ時最後に水や燃料を補給した島で、昔は西方浄土と思われていた養生島である。
娘が心配して大分県の家へ引き取ろうとするが、老婆たちは逞しく自給自足に近い生活をし、先祖から引き継いだ家を守ると断固移住を断り続ける。老婆達は漁に出かけて海難事故で無くなった夫が鳥になってあの世で生きていることを信じ、夢で交信している。

過疎ながら有人であっても、無人であっても国境の離島の管理の難しい現実と、離島で必要最小限のもので満足し、それを日常として淡々と生きる人のたくましさを淡々と描いている。

過疎化で荒れてゆく島の様や、台風に晒される恐怖、密漁船の出没など私の経験のない世界である。
「果て」とはなんだ、自分の住んでいるところが中心ではないか、国境とは?・・・など考えさせられる問題提起かなと思う。

村田喜代子著、文芸春秋刊の単行本(212頁)。