茨城の山地彷徨
私は2004年にマチュピチュへの旅行をしたので、その後暫く遠出は控え県北の山地を巡り歩いた。25,000分の1の地図に歩いた経路を書き込み徐々にルートが塗りつぶされるのに満足していたことを思い出す。

茨城県の山地は宮城県南部から続く阿武隈高地の南端部に当たる。海側が阿武隈高地、国道349号を挟んで久慈山地、更に国道118号を挟んで八溝山地に分かれている。久慈山地は福島県の白河辺りが北端で南は常陸太田、八溝山地は八溝山が北端で南端は百名山の筑波山付近である。茨城県内で2,000mを超える山は八溝山だけでハイキングには好適な山地である。ここでは度々歩いた県北の山地を中心に思い出すまま辿ってみた。


阿武隈山地の南端は風神山(241m)になる。そこから北の方へ真弓山、高鈴山、神峰山、羽黒山、小木津山、竪破山(558m)、土岳(599m)、花園山、そして県内単独の最高峰栄蔵室(881m)が県内の北端だろう。神峰山(598m)、高鈴山(623m)は日立音頭では夫婦山と唱われ日立に住む人なら知らぬ者はいない。入社したころ映画館以外に娯楽施設がなかったので、休日には高鈴山へ登山し、帰りには大雄院駅から日立駅まで鉱山電車に乗って帰ったものである。風神山~高鈴山~神峰山~羽黒山~神峰公園に至るコースは日立アルプスと呼ばれ縦走気分を味わうことが出来る。高鈴山の尾根続きの御岩山は休日には岩登りの訓練場所なっているが、昔は「賀毘禮の峰」として信仰の対象で有った由。神峰山は日立鉱山が銅を採掘した山で、明治期に公害対策で建設された煙突(156m)は有名である。地図に載っている低山では北茨城市の大北川河口の天妃山(21m)がある。
花園神社や栄蔵室に近い花園渓谷、鉱山開発期に発電所が設置された大北川には大北渓谷、高萩市の奥の花園渓谷など美しい渓谷がその山間に見られる。

久慈山地は国道349号と国道118号の間の狭い山地である。生瀬富士(408m)、月居山、奥久慈男体山(654m)(写真左)、長福山(496m)(写真右)、篭岩、鷹取岩、明山(457m)、340m峰、武生山、熊ノ山、鍋足山(529m)、国見山などが有る。生瀬富士からは袋田の滝を見下ろす事が出来る。男体山~月居山のコースは気持ちの良い尾根道のハイキングコースである。長福山は男体山の近くにあるが、登山口が見つからず何度も出直した。見当をつけ歩き始めたが登山道がなく、藪漕ぎしながら登り始めたが途中で断念し下山した。

鍋足山から猪鼻峠に至るルートはあまり歩く人がなく面白い。最初歩いたときは落ち葉で道がわからなくなり、藪を漕いでいるうちに小川に出たので川に沿って下ろうとしたが滝があって断念し、右往左往しているうちに遠くに国道349号線を走る車が見えたのでそこを目指して下山した。
男体山の東側へ下ると茨城県で最後に電灯が点いたといわれる秘境「持方」「安寺」、の集落がある。その近くに高崎山(595m)、白木山(616m)がある。登山道がはっきりせず長年行けなかったが、集落への道路の峠の近くにある事が判り到達できた。
明山の頂上付近はロープにつかまりながら上る急登を味わえる。そこから竜神峡側へ下り亀ヶ渕から竜神峡沿いに歩くと左手に「340m峰」と言う珍しい名前の山が有る。足跡を見失うと藪漕ぎの路となる。土岳の花園渓谷側からのルートは山行のトレーニングに適した約1時間で登れる山で良く登った。
この地域の渓谷は竜神峡が名高い。竜神ダムが出来、その上に竜神大吊り橋が架けられ観光名所になっている。最近は吊り橋の中央付近からダム湖へバンジージャンプする設備が出来人気である。

八溝山地は茨城、栃木、福島の三県にまたがる県内最高峰の八溝山(2022m)(写真は八溝山遙拝所付近から見た八溝山)を北端として、福島の県境の高笹山、大神宮山、国道118号に近い鷹ノ巣山、盛金富士、旧美和村のハイキングに好適な尺丈山(512m)、旧水府村の東金砂山(481m)、頂上に神社がある西金砂山、旧七会村の鶏足山、笠間市以南の佐白山、吾妻山、難台山、吾国山、加波山、宝筐山そして美しい双耳峰の筑波山(876m)等がある。


筑波山は万葉集の時代から関東の名山として和歌にも詠われている。写真は真壁町から見た筑波山のスケッチである。真壁町からの登山道は「羽鳥道」と言われる古道で、万葉集に唱われる男女ノ川はこの路の途中にある。美しい裾野を引く筑波山は火山ではなく、後期白亜紀に堆積岩石が高温の変成作用を受けて形成されたと言われている。笠間市付近では「稲田石」真壁町では「真壁石」と言われる有名な花崗岩が産出されている。高い山はないがトレッキングには最適な山地と言えよう。加波山にはハンググライダーの出発地があリ休日には関東平野へ飛び立つ人が多い。八溝山地の西側は栃木県である。

これらの山地の間には、国道118号沿いに那珂川、国道349号沿いに久慈川が流れている。茨城県の山はこれが全てではない、私が歩いていない山が他に沢山ある。

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