キリコ

お盆に姪から「お墓に叔父さんの名前でキリコを下げておきましたと母からの伝言です」との連絡が来た。金沢市から旧松任市付近ではお盆に墓参りした時「キリコ」を吊り下げる習慣がある。これは私の古里の風物詩といえよう。お盆になると墓掃除の時キリコを吊り下げる台を墓の前に立てる。
お盆にはその家を訪問せず、お墓へ行きキリコを持参し吊り下げ、中のろうそくに火を灯す。知人や親戚の新盆を迎える家の墓にもキリコの背面に名前を書いて下げてくるのが習慣である。帰りにはローソクの火を消してくる。消し忘れて他のキリコや吊り下げる台ごと燃えてしまっているのもよく見られた。
お墓をお守りする家では、誰が来てくれたのか名前をみて確認するのが習わしである。
今年はコロナ禍のため帰省しなかったので、義姉が私の名前でキリコを吊り下げておいてくれたものである。

キリコは略図の様に厚さ約2㎜、幅15㎜位の薄い板状の棒で4角の枠を作り、それを上下の梁として、その間を5~6㎜角、長さ20㎝位の柱でつなぎ、屋根の下葺に使われる薄板に切り込みを入れて屋根型に曲げて屋根として釘で打ち付ける。下の枠には中央に板を渡し、ろうそくを立てる釘を打ち付けてある。屋根には穴を開け、吊り下げ用の針金を通して輪にしている。外面に障子紙を貼り、表面には「南無阿弥陀仏」と型押しされた文字が刷られている。web siteで見るとこれは「箱キリコ」と呼ばれる物で、他に「板キリコ」と呼ばれる物があるとの事であるが見たことが無かった。いずれにしても、金沢地方の独特の習慣の様だ。

私の父は桶屋をやっていた。仕事がなくなると余材などを集めてキリコ作りの準備をし、お盆の1ヶ月位前から作り初めていた。兄と私は良く手伝わされていた。お盆の頃には納屋の中はキリコで一杯になっていたものである。母に実家の祖母にお願いして注文を取って貰い、兄と2人でキリコを荷車に載せ約10kmの道を運んだこともあった。今でもキリコの習慣は残っている様だ


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